なぜ乗客は全員無事避難できたのか?CAに賞賛の嵐!羽田空港JAL機火災

2日午後6時前、羽田空港C滑走路でJAL516便が海上保安庁機と衝突し、炎上したニュースが飛び込んできました。

事故原因の詳細はまだ明らかにされていませんが、

現時点でJAL機の乗客367人、乗員12人の計379人全員が無事に避難できたことは明らかになっています。

着陸直後に炎に包まれたA350型機の衝撃的な映像からするとまさに奇跡で、

JALの客室乗務員による的確な誘導があったからこそです。

そこで、このような航空機の火災緊急時にはどんな原則があるか、そして今回のケースではそれらがどう実践されたことで全員無事避難が達成できたのかにフォーカスしてみたいと思います。

※この記事は、現役航空会社客室乗務員の監修を元に作成されたものです。

目次

【速報】羽田空港JAL機炎上、着陸から機体停止まで

着地から滑走中の様子

画面右から左に向かって滑走するJAL機の全機体が真っ赤になっている映像から、客室内部全体が既に炎上しているように見え、一体中にいる乗客は大丈夫!?と一時は本当に心配されました。

その後、乗員乗客が全員無事避難済みである発表があり、

滑走中はエンジン部が激しく炎上してはいたものの、客室内は機体の外壁によって炎から守られていたと考えられます。

機体胴体全体が赤く見えたのは、エンジン火災の炎が機体外壁に反射していたのだと思われます。

機体停止後の様子

こちらの動画を見る限り、停止後の客室内部には煙が充満し一刻も早い脱出が必要なことがわかります。

ではこの状況で機体が停止した場合、客室乗務員はどのように判断し行動するのでしょうか。

A350型機・避難脱出用ドアは何か所? 事故機停止時の機体の状態は?

A350型機の脱出用ドアは8つ

事故機エアバス機体の非常口の場所を表す図1

今回事故にあったA350-900型機の緊急脱出用スライド付きドアは、上記のように左右4か所ずつ、計8か所あります。

左側が前方からL1、L2、L3、L4。右側が前方からR1、R2、R3、R4と名前が付いています。

事故機は機体が前方・左側に傾いて停止した

JAL機火災映像1

機体停止後の状態です。前輪が損傷し、前方に傾いています

さらに左側エンジンが地面に接触していることから、左に機体が傾いていることもわかります。

緊急時にどの非常口を使用する? CAはどの様に見極めるのか?

ドアの外部付近に火災がある場合、そのドアは開けない!

原則的に、脱出が急がれる場合でもそのドアの外側に火災がある場合はそのドアは開けません。
客室内に延焼するのを防ぐためと、火のすぐ近くに脱出・着地するのは危険なためです。

機体が傾いている場合、高くなっている部分のドアは使用しない!

脱出用スライドの長さを考え、スライドの先端が地面に届かない、あるいは急傾斜すぎて降りるのに危険な状況になりそうだと考えられる場合は、原則的にそのドアは使いません。落下による負傷を避けるためです。

今回の事故機、使用可能な非常脱出ドアはどこ?

使用可能な非常口ドアは3か所! 

事故機エアバス機体の非常口の場所を表す図2

停止時の機体の傾きと火災箇所をふまえると、脱出に使用可能なドアはL1、R1、L4の3つです。

L2、L3、R2、R3は炎上したエンジン付近にあるため、開放して脱出シュートを出すことは延焼の元となるのでNGです。

R4は、傾いた機体の中で最も高く持ち上がったドアなので、脱出用スライドが地面に届かず使用できません。そのため不用意に乗客が落下する事故を防ぐため開けるべきではありません。

実際のJAL機はどの脱出ドアを使用したか?

原則が守られ、L1、L4、(R1)が使用された!

JAL機火災映像2

この画像から、L1とL4から脱出用スライドが出ていることがわかります。

機体右側からの画像がみつからないため右側をはっきりと確認することはできませんが、

R4付近からのスライドは見えないため、使用しなかったと予想できます。

R1は全く確認できませんが、おそらく前に傾いており、着陸直後はまだ前方部に火災は及んでいないため、十分使用可能と判断し使用した可能性が高いです。

これらのことから、完璧に原則通り、使用するべき非常口が的確に判断されています。

緊急脱出の90秒ルール

航空会社に共通する世界基準として、90秒ルールがあります。

90秒ルールとは、非常用脱出口の半分以下を使って事故発生から90秒以内に乗客全員を脱出させなければならないというルールです。

8か所ある非常脱出ドアのうち3か所しか使用できずに367人全員を脱出させた今回のケースでも、この90秒ルールに則って速やかに円滑な誘導が行われたと考えられます。

速やかな避難を促すポイント

1秒も無駄にできない緊急脱出であっても、事態の認識がよくできずに

上の棚から荷物を取り出そうとしたり、バッグを担いで避難しようとする人が必ずいます。

これは避難を長引かせる行為であり、客室乗務員がやめる様に毅然と指示しなければなりません。

普段は柔らかいトーンで優しく乗客に話す客室乗務員も、この時ばかりは100%保安要員に徹し、

強い口調に変えて乗客の無駄な行動を制する必要があります。

事故時、CAが的確な判断をすることは簡単なのか?

ほとんどのCAは航空機事故未経験、緊急時に訓練通り動くことは簡単ではない

客室乗務員の保安訓練は厳しく、年に一度の確認試験にパスできなければ乗務停止となりますし、訓練も模型を使用して繰り返し行われています。

しかし、特に先進国の場合は航空機事故は起こらないことが当たり前で、
世のほとんどの客室乗務員は事故を経験したことはありません。

今回の事故は、通常の着陸体勢から問題なく着陸すると誰もが思っていた状況でした。

突如滑走路上の別機と衝突し、一瞬で炎上が起こり、機体停止までの数秒間に状況判断が求められたのです。

機体と外の状況を瞬時に把握し、自分が担当する非常ドアを使用するか否か、煙が充満する緊迫した中で冷静に行動することは決して簡単なことではありません。

緊急避難の訓練時だけでなく、常日頃から緊急時を想定してイメージトレーニングする習慣があってこそできる反応です。プロフェッショナルな客室乗務員がいたからこその、今回の結果だと言えます。

羽田空港JAL機炎上、乗客365人全員を無事避難させたCAの功績:まとめ

だれもがホッと胸を撫でおろした「乗客全員無事避難」という一報の陰には、

客室乗務員による的確な判断と行動があったことがわかりました。

自社の客室乗務員に対する保安訓練は一定の世界共通基準が存在するものの、

安全性を大切にする文化と習慣があるかどうかは各航空会社の体質にもよります。

今回JALがこのような事故に遭った中で、乗客全員を無事避難させた功績を称えたいと思います。

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